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【作品名】DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 【ジャンル】漫画 【名前】クロコダイン 【属性】元魔王軍百獣魔団長 【年齢】30歳程度 【長所】インフレに追いつけそうになかったけど最終決戦まで生き残った 【短所】クロコダイン「ぐああああああああ!」→パーティー「ク、クロコダイーン!!」 【備考】人間年齢で30歳くらい、おそらくもっと歳取ってる vol.2
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【作品名】DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 【ジャンル】漫画 【名前】クロコダイン 【属性】元魔王軍百獣魔団長 【年齢】30歳程度 【長所】インフレに追いつけそうになかったけど最終決戦まで生き残った 【短所】クロコダイン「ぐああああああああ!」→パーティー「ク、クロコダイーン!!」 【備考】人間年齢で30歳くらい、おそらくもっと歳取ってる vol.2
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アシタカが「SAN、どこだSAN!」と呼んでいたか(304p5行目) ジブリのアニメ「もののけ姫」より。SANは本来はこの作品のヒロインの名前「サン」。 ギリギリchop(304p7行目) B zの楽曲名。 ゴルベーザ兄さん(304p12行目) ファイナルファンタジー4に出てくるキャラ。 いや、その理屈はおかしい。(305p2行目) 国民的アニメ「ドラえもん」より 私の記憶が確かならば(305p6行目) 料理の鉄人の提供読みの言い回し。 なお料理の鉄人は後にDS版FF4でゴルベーザ役を務めた鹿賀丈史氏が進行役であった。 衝撃のファースト〆切~抹殺のラスト〆切(305p15行目) アニメ「スクライド」より主人公・カズマの必殺技である「衝撃のファーストブリット」「撃滅のセカンドブリット」「抹殺のラストブリット」 ちなみに「撃滅」と「抹殺」はスクライドと同じく平井久司がキャラクターデザインを務めた「機動戦士ガンダムSEED」の「クロト・ブエル」の口癖でもある。 一瞬、だけど閃光のようにまぶしく燃えて生き抜いてやる(307p8行目) 漫画「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」22巻より大魔導士ポップの名台詞 這い寄るM@STERリレーションズ(307p17行目) ゲーム「THE IDOL M@STER」のコミカライズ版である「アイドルマスター relations」 もちろんロボットに乗ったりはしないので安心してください
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thanks 4 Ms.talt. ポップガードの作り方 用意するもの→針金(ハンガー解体でおk)・ストッキング 基本的にこれだけw 1:針金でわっかを作ります 2:ストッキング被せます 3:マイクのどこかに針金の余った部分を巻いて取り付けます(取り付け場所はマイクじゃなくてもおk)
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四 奇跡の草原 前ページ次ページゼロの影 学院に戻ったルイズはオスマンから呼び出され、『始祖の祈祷書』を渡された。 王女とゲルマニア皇帝の結婚式の巫女に選ばれたため詔を考えなければならない。 意気込んだもののすぐさま挫折した彼女は使い魔に助けを求めかけて即座にやめた。どう考えても祝福の言葉など持っているとは思えない。 うー、あー、と妙な声を上げながら床やベッドを転げ回る彼女の奇行にも一切関せず読書に耽っている。その傍らには数冊の書物が置いてあり、扱っている内容はバラバラだ。 今読んでいるのは始祖ブリミルについての本らしい。 約六千年前に活躍したハルケギニアで神の如く崇拝される偉大なメイジであり、その生涯や魔法は謎に包まれている。 魔界の魔法と始祖が操ったとされるものには似た部分があるため興味をそそられるところだが、書物は伝説の偉人として扱っており、どこまで確実かわからない。 何しろ彼の魔法で天地までもが鳴動したというのだ。神格化され大げさに伝わっている部分もあるだろう。 天空を思わせる模様が刻まれた表紙の本を閉じ、新たな一冊を手に取る彼を見てルイズの血管は切れそうになった。 (ななな何よわたしがこんなに苦労してるってのに自分は優雅に読書なんていい身分じゃない。そんなに大魔王さまのお役に立ちたいってわけ!?) と憤ってみたところで真面目に肯定されるに決まっている。 ますます釈然としないものを感じたルイズはささやかな抵抗を試みた。彼を連れて中庭に出た後、質問攻めを始めたのである。 青空の下に連れ出して少しでも開放的な気分にさせ、情報を聞き出そうというのだ。 まずは返事する確率の高い戦闘に関する質問――特に呪文について尋ねた。 こちらが知識を提供するだけでは不公平だ。前々から彼の世界のことも知りたいと思っていた。 すると、ほとんど喋らない彼の代わりに大魔王が質問に答えた。 一般的な火球呪文や氷系呪文といったものから天候を操る呪文まで様々なものを説明され、ルイズの目が輝く。 ミストバーンへの質問の大半は沈黙に撃墜されたが、答えが返ってきたのは大魔王の偉大さについての質問だった。 「バーン様をお守りするのが、私の使命なのだ!」 という高らかな宣言にはじまり、数千年の間仕えてきたと誇らしげに語られたルイズは妙な疲労を覚えた。 ワルドは愛情を向けてくれるが、召喚した使い魔ではない。 普段傍にいる相手が全く心を許さないと面白くない。 気を取り直して情報を探るべく質問を続け、ずっと気になっていたことをぶつける。 「あんたがいた世界――魔界って太陽が無いんでしょ? どうして?」 答えたのはやはり大魔王だった。 かつて世界は一つであり、人間と魔族と竜族が血で血を洗う戦いを繰り広げていた。 延々と続く争い憂いた神々は世界を分け、別々に住まわせることにした。脆弱な人間は地上に。強靭な体を持つ魔族と竜族は魔界に。 魔界にはあらゆる生物の源である太陽がなく、荒れ果てた大地が広がっているだけである。 ならば魔界は真っ暗なのかと尋ねると否定された。 数千年前に作られた人工の太陽が光源となり魔界を照らしているが、昼間でもかすかな光しかなく生命を育むほどの暖かさは無いのだという。 地上で見るものと同じ太陽を作り出すことはできず、彼らは太陽を手に入れようとしている。 ルイズは話を聞いてうーん、と考え込んだ。 馬の遠乗りで丘に登り気持ちのいい風を感じることも、光を浴びながら美味しいお弁当を食べることもない世界。 花々の無数の色彩や木々の緑、空の青も雲の白もない世界。 頭で理解しても実感は湧かない。 もし魔界に太陽があって地上と同じ豊かな地であれば、大魔王は何を望むだろうか。 試しに尋ねてみると「花見酒というのもいいかもしれんな」と笑いながら言われたが、どこまで本気かわからない。 話に熱中していたルイズは声の大きさに気を遣うことを忘れていた。 そのため、メイドの一人――シエスタが聞き耳を立てていたことに気づかなかった。 謎が多いミストバーンについての情報は生徒だけでなく使用人も欲しがっている。 彼女は舞踏会の時に聞いた会話を厨房の料理人や仲間に知らせたが、一笑に付された。「見た目からして闇っぽいのに太陽を求める奴に従うわけないだろ」というのである。 嘘じゃないと言い張っても聞き入れられなかったシエスタは意気込んでさらなる情報を集めようとしていた。 そして―― 「きゃああっ!?」 気配を感じたミストバーンの爪に危うく刺されかけた。皮膚一枚を隔てたところで奇麗に止まっているのは見事としか言いようがない。 「すごい、加減がずいぶん上手くなったのね。レベルアップしたんじゃない?」 使い魔の影響を受けて感覚が麻痺してきたようだ。 「……私が?」 彼は意外そうに己を指差した。褒められて反応に困っているらしい。 間違った方向に心温まる会話を繰り広げる二人にシエスタがおずおずと詫びる。 「あ、あの、本当に申し訳ありませんでした! 太陽についてお話ししているのを聴いてしまいました……」 盗み聞きされたと知ってルイズは渋い表情になったが、そもそもこんな場所で大声で喋っていたのが悪い。 シエスタが再び丁寧に謝罪し、お詫びの気持ちとして故郷に行くことを提案した。 「すごくきれいな夕焼けの見える草原があるんですよ。おいしいシチューも」 その草原はあまりの美しさから『奇跡の草原』と呼ばれたこともあるらしい。 ルイズは迷ったが、素晴らしい光景を見ればインスピレーションが湧いて詔の文面が思い浮かぶかもしれない。 ミストバーンも主の目の保養になればと承諾し、ワルドも加えてシエスタの故郷――タルブの村に行くことに決めた。 だが、出発しようとしたその時、彼らの前に現れた人物がいた。 ずずっと地面から黒い首が生え、パチリとウィンクしてみせたのだ。 姿を現した人物は黒い衣に全身を包み、仮面を被っている。帽子にある輝くラインの数は不吉な十三だ。奇術師のような格好だが、手には鋭く光る鎌が握られている。 不気味な男にワルドとルイズが杖を向けたが、相手は敵意が無いことを示すように手を振ってみせた。 珍しいことに、ミストバーンがわずかに弾んだ口調で相手を呼ぶ。 「……キル!」 「久しぶりだねミスト。元気にしてる?」 「お前もハルケギニアにいたとは……!」 ルイズは事態についていけず口をあんぐりと開けている。 友好的な雰囲気が漂うなか、ワルドは警戒に満ちた目で尋ねた。 「何者だ」 キルと呼ばれた男は向き直り、深々と一礼した。 「初めまして。ボクはキルバーン。死神とも呼ばれているんだ。ミストの親友だよ」 ルイズがミストバーンの方を見ると、肯定するように頷いてみせた。 「嘘、あんた友達いたの?」 失礼な台詞も意に介さず、二人は喜んでいるようだ。 (こういうのを感動の再会って言うのかしら?) そんなことをぼんやり考えるルイズの前で会話が進んでいる。もっとも、口を動かすのはほとんどキルバーンの方だったが。 「キミがいなくなってしばらくしたらボクも召喚されたんだ。そこでバカンス気分で楽しんでたってわけ。バーン様に協力する義理はあっても義務はないからね」 キルバーンを召喚した人物はルイズと違って放任主義のようだ。 「戻れるかどうかもわからんのに気楽だな」 呆れたような声にキルバーンは目を瞬かせ、クスクス笑った。 「ボクはキミとは違うんだ。キミはバーン様のおそばにいられなくてストレスたまってるだろうけど、こっちはエンジョイしてるよ。ねえピロロ?」 キルバーンがそう言うとどこからともなく一つ目の小人が姿を現し、ぴょこんと肩に乗った。 ルイズが目を丸くして声を上げる。 「可愛い!」 「ピロロっていうんだ。よろしくね」 魔法使いの格好をしたつぶらな瞳の小人はキルバーンの使い魔であるらしい。明らかに怪しく物騒な得物を持つキルバーンと違い、実に心和む姿だ。 ワルドは心を動かされた様子も無く警戒を解かぬまま客人を見つめている。 「キル、魔界に戻る手がかりは見つかったか?」 キルバーンはやや大げさに肩をすくめてみせた。 「……さあ? 真面目なんだからミストは。ま、異世界で一人っきりじゃないってわかったわけだ……嬉しいかい?」 返事は沈黙だったが、眼の光が普段より明るく輝いているため喜んでいるようだ。 友人と言うのは嘘ではないのだろう。 敵に対して一切容赦のない彼だが、相手によっては人間のような感情を見せることもあるらしい。 「それより、これからお出かけするように見えるけど?」 タルブの村に夕焼けを見に行くと告げられ、ピロロもすっかり乗り気になったようだ。 「行きたいなあ。お願い、キルバーン」 「わかったよピロロ。観光しようじゃないか」 ルイズは心底嫌そうな顔をした。 白と黒で対になっている、バーンの名を冠する二人は目立ちすぎる。村人たちもさぞかし反応に困るだろう。 だが、承諾しなければ大変なことになる予感がしたため渋々頷いた。 ワルドはルイズよりもいっそう渋い表情になっている。愛する少女との甘美なる一時を邪魔されそうな予感がするためだ。 シエスタは不審人物に疑いの目を向けたが、ミストバーンの友人だと告げられると「ああ、道理で」と納得して頷いていた。 類は友を呼ぶのですね、と呟く彼女にルイズは複雑な心境だった。 さらに、形式的とはいえ二人が夫婦と知らされたキルバーンから 「あまり褒められた趣味じゃないねェ」 と呟かれたためいっそう心が沈んだ。 変な人物から遠まわしに趣味が悪いと言われるのは相当堪える。 (明らかに怪しい奴に言われたくないわよ……) 心の中で力無く呟いたルイズは、肺の奥底から溜息を絞り出した。 実際の夕焼けを目にしたルイズは言葉を失い、ただ見とれていた。 常に飄々としているキルバーンも感嘆したように口笛を吹く。 草原は燃える炎の色に染まり、沈みゆく太陽は普段見るものの何倍も美しかった。 その輝きは暖かく優しく照らすだけではなく、弱い者を容赦なく焼き尽くすようにも見えた。 奇跡の名に恥じぬ凄絶な光景を大魔王も気に入ったようだ。 さらに、反対側の山から昇る朝日も別の美しさがあるのだと言う。 「この光景こそが宝物だって思うわ」 食事を告げに来たシエスタがしみじみとしたルイズの言葉に嬉しそうに頷く。 いつものように沈黙しているミストバーンは主と地上に来た時のことを思い出していた。 『何千年後になるかはわからぬが……あの太陽は魔界を照らすために昇る』 偉大なる主は手で太陽を掴み取る仕草をしながらそう語った。 さらに思考は過去をたどり、主との出会いまでさかのぼる。 『お前は余に仕える天命をもって生まれてきた』 全てはそこから始まった。 どれほど永い時を生きても、何があっても、その言葉を忘れることはないだろう。 彼らは夕陽を見る間、確かに同じ思いを共有していた。 ただ、キルバーンだけはそこまで心を打たれた様子は無く、草原をあちこち歩き回っていた。 興奮も冷めやらぬままシエスタの家で名物のシチューを食べたルイズは目を輝かせながら舌鼓を打った。素朴ながらも貴族のぜいたくな舌を満足させるほどの味らしい。 ワルドは喜ぶ彼女を実に幸せそうな顔で眺めているが、キルバーンがいなければいいのにと思っている。 案内してくれたシエスタや二人の仲を邪魔する真似はしないミストバーンは仕方ないが、キルバーンは明らかに異分子である。 ワルドの内心も知らず、シエスタが恐る恐る二人にも食事を薦めた。 あっさり断られた彼女が落ち込んでいると、なんと大魔王その人が語りかけてきた。 「数千年生きればいくら贅を尽くした食事でも飽きもする……そのような料理を味わってみたいものだ」 たちまちシエスタの顔が明るく輝いた。 「じゃあ作り方教えますね! 実際に作る所を見た方がいいですよね……ミストバーンさんも一緒に作りませんか?」 ルイズとワルドがシチューを噴き出しそうになり、かろうじてこらえる。ルイズは慌てて飲みこんで必死の形相でシエスタを止めた。 「何言ってんの!? こいつが料理なんてドラゴンが裁縫する方がまだマシだわ!」 ワルドも激しく頷いて心から同意を示した。 彼は暴言にも動じず主からの指示を待っている。 「作り方だけ教えればよい……と言いたいところだがあえてお前に作らせるのも面白いかもしれんな」 (よっぽど退屈してるのかしら) 腹心の部下がやり遂げると信じているのか、奮闘する様を見て楽しもうと思っているのか――ルイズにはどうも後者に思えてならなかった。 「じゃ、決まりですね。最高の一品を作りましょう!」 「たまには逆らいなさいよ……」 その忠誠心の十分の一でいいから自分に向けてほしいと思いながら、ルイズはテーブルに突っ伏した。 一方、キルバーンは真剣な光を目に浮かべ、親友に顔を近づけた。 「ねえミスト、キミに訊きたいことがあるんだ。とっても重要なことだから、よく考えて答えてほしい」 重々しい口調にシエスタが唾を呑み、ミストバーンが目を光らせる。 キルバーンは真面目そのものの声で尋ねた。 「どんな柄のエプロンを着るつもりだい?」 「そんなの着るわけないでしょおおおっ!?」 即座に叫んだのはルイズ、こらえきれずシチューを噴き出したのはワルド、興味津々の顔をしているのはシエスタだ。 胸に手を当てて発言する。 「わたくしのものでよろしければ――」 「何を言ってるんだ!」 立ち直ったワルドが勢いよくテーブルを叩いた。食器が跳ね、真剣な語調にルイズが息を呑む。 「彼がエプロンを着たって嬉しくとも何ともない! ここは僕の可愛いルイズが着るべきだろうどう考えても!」 「ワルド様……」 早まったことをしたかもしれない。ルイズは頭痛を覚えこめかみをおさえた。 一同から注目されたミストバーンは、考え込んでから逆に質問した。 「エプロンとは何だ。私にも装備できるのか?」 防具の一種か何かだと思っているらしい。 試しに想像してみたルイズは身震いした。 記すことも憚られる。 「何も知らないんだねェ……。悪魔の目玉で魔界中に映像流して適当な情報バラ撒いても面白いかも? ククッ」 ほくそ笑んだキルバーンにルイズの忍耐力は限界に達し、 「あんたたち今すぐ魔界に帰りなさい! 帰ってくださいお願いだから!!」 と絶叫した。 前ページ次ページゼロの影
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前ページ次ページゼロの影 其の十五 罰 ルイズは怯えていた。 本物の怒りに。純然たる殺意に。今まで彼を恐ろしいと思ったことは何度もあったが、全く比べ物にならない。 共に戦い強さを実感したウェールズでさえ目を見開き凍りついている。 ルイズを庇おうと足を踏み出しかけたが、彼女自身が拒否してミストバーンの前に進み出た。 覚悟を遥かに上回る剥き出しの殺意と憎悪が心を切り裂いていく。 彼をここまで怒らせたのは自分だという事実が何よりも悲しかった。 それでも憎悪の化身から目を逸らすことはできない。自らの行いが招いた結果から逃げるわけにはいかない。 (わたし、死ぬのね) フーケとの戦いで彼に殺されるかもしれないと恐怖した。今、その予感が現実になろうとしている。 「……ごめんなさい」 別れが近いと思うと素直に言える。 同じ目に遭えば自分も相手を許せないだろう。わざとではなかった、で済むような過ちでも相手でもない。 使い魔からこれほど真剣に見つめられるのは初めてだという想いが、不思議な安らかさをもたらした。 杖を構えたものの抵抗は無意味だとわかっている。いかにルーンが力を発揮しようと、こうなった彼を止めることはできない。 彼女は激痛の後に訪れる死を覚悟した。 だが――何も起こらない。 彼は腕を握りつぶさんばかりに掴み、自分を抑えるのに全力を傾けているようだ。全身が凶暴な衝動を訴えているのに。 「わたしを……殺さないの?」 眼光は彼女を射殺さんばかりだ。灼熱の怒りが草原をも焼き尽くすほどに迸っている。それなのに最大限に自制心を働かせ、攻撃を押しとどめている。 答えは血を吐くようだった。 「大魔王さまのお言葉は全てに優先する……!」 どれほど殺したくない相手でも大魔王のためならば容赦なく殺す。その逆もまた然り。 『お前はその娘を守り抜け。騎士……シュヴァリエのごとくな』 明言されていなければ、あるいは単に協力しろというだけならば殺しただろうが、下された命令に逆らうことはできない。 主への忠誠こそが、彼にとって譲れぬものなのだから。 「バーン様は言われた! 貴様を守り抜けと!」 ――ああ、やっぱり。 彼女の心を静かな諦めが包んでいった。 『私が守るからだ』 (守るって言ったのも命令でしかなかったんだわ) それ以外無い。そこに少しでも彼自身の意志があると思ったのは勘違いにすぎなかった。 彼は力にしか興味がないとわかっていたはずなのに、何を期待していたのだろう。 大魔王のために『虚無』を手に入れようとしているだけだ。ルイズ自身は必要とされていない。 ワルドはありもしない力を求め、ミストバーンは目覚めた力を求めた。違いは甘い幻想に包んだか否かということだけだ。 努力する姿勢を認められたと思ったのも、ゼロではないと言われた気がしたのも、きっと――。 認められたと思って喜んでいた自分がひどく馬鹿らしく、こっけいな道化に思えた。 (なんだ……わたしのやってきたことって、結局――) 少しずつ築き上げてきたものが、自分を支えてきたものが、ガラガラと崩れ落ちる音が聞こえた。ゼロになるのを実感した。 彼を召喚できたのは何かの間違いだと――今までやってきたことに何の意味もなかったと思い知らされることが罰なのかもしれない。 残ったものは、彼からの深い憎悪だけ。 心を虚無が蝕み力を削ぎ落していく。今彼女はウェールズがぞっとするような虚ろな表情を浮かべている。 唯一の救いは、彼女への怒りが大きいあまり他の者達に危害を加える様子は無いことだ。 ひどく空虚な気分になったが、それこそがふさわしい気がした。 一方ミストバーンは、ルイズだけでなく自分自身に腹を立てていた。 いくら『虚無』が強力でも全力で立ち向かえば耐えられたかもしれない。ルーンの働きもあったとはいえ抵抗できず、こんな事態を招いてしまった。 完全でなくても使命を見失い、守るべきものを守りきれなかったことが許せなかった。 ほんの一瞬とはいえ偽りの安らぎの中に浸ってしまった。 (何が……何が“バーン様の部下”だッ!) 醜態を晒し、主の信頼を裏切ってしまった悔しさのあまり体が震える。 主が知れば厳しい罰を与えるだろう。それでも許されるかどうかわからず、任を解かれ処刑されるかもしれない。 ルイズと自分自身への怒りが極限にまで達し、それを無理に抑え込もうとした時――それは起こった。 授業の時と同じようにルーンが輝き、伸びた光がルイズと彼をつなぐ。前回は感情の高まりと抑制に呼応して共鳴するだけだったが、今回は違った。 ルーンを媒介として彼の膨大な感情――怒りがルイズに流れ込んでいく。 無意識のうちに『始祖の祈祷書』を開いた彼女はページをめくり、浮かんだ文字を朗々と詠唱する。 ――ユル・イル・ナウシズ・ゲーボ・シル・マリ からっぽだったルイズの中に入った感情はうねり、高まり、『虚無』の力へ変換されていく。 ――ハガス・エオルー・ペオース 詠唱をなおも続ける。彼女が唱えている呪文の名は世界扉(ワールド・ドア)。 やがて杖を振り下ろすと水晶のようにキラキラ光る小さな粒が空中に現れ、鏡のように光景を映し出した。しかしそこに映っているのはルイズが見たこともない暗黒の世界だ。 人が通れるほどの大きさまで膨らんだ扉を見て彼女は痺れた脳の片隅でぼんやりと考えた。 タルブの村で大半の力を使ってしまったはずなのに、これほどの大きさの扉を作り出すことが出来たのは彼の感情とルーンの働きだ。 特に、流れ込んできたものの中の一部は莫大な力へと換わった。まるで圧縮されたエネルギーの塊が解き放たれたように。 疑問を解決するより先につながった先が魔界だと知ったミストバーンはためらわず歩いて行く。共に来いとも言わないまま。 ウェールズは約束を果たすために従い、ルイズは立ち尽くした。 扉の先に何が待っているのか分からない。行けば戻れないかもしれない。 それでも――このままでは終われない。 「わたしも、行かなくちゃ」 ルイズは力を振り絞り、彼らを追った。 彼を召喚したことの意味を確かめるために。 魔界に到着した途端ルイズ達を襲ったのは魔物の群れだった。 咄嗟に杖を向けて爆発を起こそうとしたが何事も起こらない。完全に精神力を使いきってしまったようだ。 ルイズを守ろうとしたウェールズは複数の敵に囲まれてしまった。無力な彼女に鋭い爪が迫り――銀の光が次々と敵を穿ち引き裂いていく。 ミストバーンが、彼女を守っている。本心はどうあれ指一本触れさせまいと力を尽くしている。 共に戦っているウェールズがふと訝しげな顔でミストバーンを見つめた。戦いぶりにどこか違和感を覚えているようだ。 『バーン様は言われた! 貴様を守り抜けと!』 心にどうしようもなく苦いものが広がるのを感じながらルイズは空を見上げた。 何が足りないのか、千の言葉より雄弁に語る暗黒の空を。 敵の集団を片付けたミストバーンはルーラを唱え大魔王の居城へ向かった。 真っ先に主の無事を確認して安堵したのも束の間、合わせる顔が無いというように俯く。 客人に歓迎の意を見せた大魔王が反応に目をとめ何があったのか問うと、言葉もなく身を震わせる。 ルイズは戸惑ったように彼を凝視した。 (怯えてる? こいつが?) あれほど強く冷酷な彼が、威厳は感じるものの外見は普通の老人に恐怖するなど信じられない。 釈然としないままルイズが代わりに経緯を説明すると、部下の味わった苦しみを誰よりも理解しているはずの大魔王は冷然と告げた。 「罰を与えねばなるまい」 「でも……!」 ルイズが言い募ろうとするのを制し、罰を受けるのは当然だというようにミストバーンが進み出る。 その体がわずかに宙に浮き、両手が上がる。見えない十字架に磔にされているように。 大魔王が手を差し伸べると黒い波動が走り、彼の身体に突き刺さった。圧縮された暗黒闘気が撃ち込まれたのだ。 空中に固定されていなければ今の一撃で吹き飛び壁に叩きつけられただろう。 「ぐああ……ッ!」 彼女の顔から血の気がさっと引き、拳に力がこもる。自分が目の前の光景を作り出してしまった――その一念が心を押し潰そうとする。 彼は苦痛の声を押し殺し、続く攻撃に耐える。 二度。三度。 鈍い音が空気を震わせるたびに体がわずかにはねる。 大魔王の面には冷ややかな怒りがわずかに浮かんでいるだけで表情は無に近い。チェスの駒を動かすような態度だ。 彼の前に飛び出しかけたルイズをウェールズが止める。手加減の有無にかかわらず彼女が食らえば一撃で死んでしまう。 「放して! あいつは悪くないもの、代わりにわたしが――!」 ふりほどこうと必死にもがくルイズを痛ましげに見やり、言葉を絞り出す。 「罰を受けなければ、彼は自責の念に苛まれることになる……! 庇ったところで苦しむだけだ!」 そんな精神状態では力を発揮することもできない。 実際、到着直後の魔物との戦闘では力を出し切れていないようだった。共に戦ったことのあるウェールズだからこそわかる。 残酷だが前に進むためには必要なことなのだろう。 庇うことでルイズの気は済んでも、本人には逆効果になる。 認識の甘さを悟ったルイズの動きがピタリと止まる。しばらく俯いていたが、やがて顔を上げた彼女の眼は悲痛な色に染まっていた。 「見てることしか……できないなんて……」 しょせんできることなど何もない、彼との関係はそんなものだと言われているような気がした。 奮い起こした勇気を深い絶望があっけなく飲み込んでいく。 ワルドが最期に告げた言葉が心を支配していく。 何も出来ないのも当然だ。 なぜなら自分は“ゼロ”だから。 避けることも、防ぐことも、倒れることすら許されない無慈悲な攻撃。人間にたとえるならば銃弾を撃ち込まれ続けるようなものだろう。 (これが魔界の――大魔王の流儀ってわけ?) 肩書からは想像できないほど理知的で知らぬうちに安堵したのだが、魔界に君臨する王が穏やかなだけであるはずがない。 惨い光景から目をそむけそうになるのを必死でこらえる。本来ならば自分が味わうべき苦痛なのだから。 その顔色は蒼く、きつく噛み締めた唇から血が滴り落ちる。 無力さを思い知らされる――これこそが本当の罰なのかもしれない。 今にも切れそうな精神の糸をかろうじてつないでいるのは傍らのウェールズの存在だった。 力が抜けそうになる彼女の体を支え、万一危険が迫ればすぐさま守れるように張りつめた空気を身にまとっている。 同じ貴族。同じハルケギニアの住人。同じ――人間。 一人だけならば耐えられなかった。 どれほどの間攻撃が続いたのかわからない。 「あ……」 不可視の戒めを解かれた彼の体が落下し床に膝をついた。 倒れそうなのをこらえ、立ち上がる。それだけの動作も辛いようだ。 先ほどまでの無表情が嘘のように大魔王は客人に笑いかけた。今度は自分の番かと身構えるルイズに否定するように手を振ってみせる。 「安心せい、そなたに同じことをするつもりはない」 「でも、あいつがあんなことになったのも、全部わたしが――」 痛い目になどもちろんあいたくないが、自分だけ逃げるのはもっと嫌だ。 恐怖をこらえ気丈さを見せるルイズに大魔王は面白いと言うように笑った。 「代わりと言ってはなんだが少々力を貸してもらう」 「え?」 大魔王がすっと笑みを消して呟いた。 「困った事態になったのでな」 前ページ次ページゼロの影
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え?彼女を召喚した時の事? 勿論よく覚えてるわ。 だってねぇ、何度も何度も失敗して、やっと成功したと思ったら。 立っていたのが最上級のマントとドレス着て、王冠をつけたわたしと同じ位の女の子なのよ? とてもじゃないけど忘れられないわ。 聞けば即位式の直前に召喚のゲートをくぐったって言うじゃない。どれだけわたしが焦ったかわかる? なのにあの子ったら平気な顔で「帰るまでは使い魔やってもいいわよ」なんて言うんだもの。 しかも理由が「なんか面白そうだし」って。ほんと大物よね。 ただ先生や学院長とはしっかり交渉してたわ。結局表向きは某国の王族留学生って事になったの。 そうね、本当にしっかりしてたわ。 貴族嫌いの怪盗が彼女の事を守ったりする位、毅然としているのよね。 わたしの国の王女様、あ、今は女王様なんだけど、その姫様に密命を受けた時も、王族としての心構えを説いていたわ。 しかも四系統魔法全てを使いこなす力を持ってるんだもの、今だから言えるけど、それを知った時は嫉妬したわ。 でも、わたしが八つ当たりしちゃった時、彼女は言ったの。 「そこで諦めたら本当にゼロになっちゃうわよ」って。 そして魔法の使えない男の子の話をしてくれたの。 ふふ、なによ。赤くならなくてもいいじゃない。 あら、立派すぎるなんてそんな事言っていいの? まあね、確かにそれだけじゃないわ。 良く言えば好奇心旺盛で、悪く言えばトラブルメーカーだったもの。 特に人の恋愛沙汰には必ずと言っていいほど首を突っ込んで。 一度なんか、決闘騒ぎになった位なんだから。 まあね、自分が召喚しておいてなんだけど、即位式の直前に怪しげなゲートをくぐるくらいだものね。 本人は「だってこういうの見たら、入ってみたくなるものでしょ!?」って言ってたけど。 そう言えば町で宝の地図を大量に買い込んできた時もあったわ。 ええ、勿論全部ニセモノだったわよ。宝探しに付き合わされる身にもなって欲しいと思わない? え?うー、そ、それは確かに楽しかったけど、で、でも大変だったんだからね! うん、確かに、主人と使い魔というより、友達として付き合ってたと思う。 わたしが裏切り者に殺されそうになった時も。 捨て駒として七万の敵の足止めを命じられた時も。 使い魔としてじゃなくて、仲間として、友達として、一緒に戦ってくれたわ。 魔法が使えなかった時も、虚無の担い手になった後も、変わることなく、ね。 後の事はもう知ってるでしょ? ガリアのヨルムンガルドに包囲された時、わたしの『世界扉』のむこうからやってきてくれたアンタなら。 どんな攻撃も跳ね返すあの人形を、素手で薙ぎ倒しちゃうんだもの。本当に凄いわよね。 ちょっと!なんて顔してるのよ! そりゃあ最初は驚いたけど、今アンタの事を怖がってる人なんていないわ! そもそもあれ位の事ができなきゃ、あの子につり合いなんてしないでしょ! 大体アンタと再会した時のあの子の笑顔、見てないの? わたしといる時にあんな顔なんて一度も見た事無かったんだから! も、もも、もうちょっと自信持ちなさいよね! あ、もう向こうも準備終わったみたいね。 じゃあ、招待席にもどるわ。 もう勝手にどっかに行って、わたしの親友を心配させるんじゃないわよ! もっとも、結婚式がすんだら二度と離さないって言ってたけど。 レオナにここまで言わせるんだから、本当に果報者よね。 ちょっと、聞いてるの? ダイ。
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50ccポップ/走れ! スクーター!/レトロ本舗 スクーターにのって きみが待ってる町に幸せひとつ スクーターにのって きみが待ってる町に花束をひとつ おでかけスクーターバイク 走るよきみの町へ ブンブンブンブン オーイエ ちょっとお洒落をしてさ あの公園通りへ ブンブンブンブン オーイエ きっと心はワクワクさ 雲を追っていこう 今日も明日もワクワクさ 風にのっていこう スクーターにのって きみが待ってる町に幸せひとつ スクーターにのって きみが待ってる町に花束をひとつ
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第一章 光と影 第一話 ルイズと影 前ページ次ページゼロの影 一人の少女が杖を握りしめ、己の前に立ち上る煙を食い入るように見つめている。それを取り囲む者達はからかいと好奇心を混ぜた表情だ。 「まーた失敗か?」 「う、うるさいわね!」 彼女の名はルイズ。 トリステイン魔法学院にて日々勉学に励む将来有望な魔法使い――のはずだが、フライやレビテーションなど基本的なものすら使えず、生み出すのは爆発だけである。 当然他の生徒からは馬鹿にされ、ゼロのルイズと呼ばれている。 今日は使い魔を召喚する儀式が行われているが、成功を確信している者は一人もいない有様だった。 (お願い、お願いだから……!) 祈りが届いたのか、煙が晴れると一人の若者が倒れ伏していた。白銀の髪は長く伸び、青白い衣とも相まって神秘的な煌きを放っている。 「何だよ、人間の――平民じゃないよな?」 髪の下の耳はわずかに尖り、エルフに似ているのだがそれに気づく者はまだいない。 「神官か、貴族か……。さすがルイズ、俺たちにできないことを平然とやってのけるっ!」 単純な感嘆ではなく斜め上の意味が含まれていたが、彼女はふふんと鼻を鳴らし、それはもう偉そうにふんぞり返った。 もし彼が高貴な身分の者ならば、それを呼び出した自分の境遇は完全に変わる。今までの屈辱的な立場から逆に彼らを見下すことさえ可能になる。 彼らの傍らには幻想的という言葉が相応しい獣たちの姿があったが、それらに遜色ない異質な空気をまとっている。 凝視に応えるように若者の指が動き、ゆっくりと身を起こした。顔が露になり見た者が唾を呑む。整った相貌は冬の月を思わせた。目は閉ざされ、額には装飾品を連想させる黒い影が集っている。 唇からかすれた響きが漏れた。 「お許し下さい……バーン様」 (バーン様? 誰かしら) 今はとにかくコントラクト・サーヴァントを行うべきだ。歩み寄るルイズに青年は身構えようとした。 しかし、未熟な傀儡師が人形を操ったかのように動きがぎこちない。立ち上がりかけたところでルイズの唇が触れた。 若者は目の前の状況を理解しようと頭を働かせていた。 いつものように玉座の間に控えていたところ突然光り輝く鏡が出現し、主を庇おうとした際に腕が触れてしまった彼を吸いこんだのだ。 奇妙な感覚に襲われ、枷が幾つもつけられたかのように彼の体が重くなり――見知らぬ場所に放り出され、少女が歩み寄って来た時も思うように体を動かせなかった。 そのため反応が遅れ口づけを交わすこととなってしまった。 (バーン様、申し訳ありません) 真っ先に思い浮かんだのは主への謝罪の言葉。 大切な主の体に、それも唇に触れられるとは――考えられぬ失態に身を震わせる。 次に湧き上がるのは、怒り。 「よくも……許さぬ!」 端正な面からは想像できない激しい語調にルイズは思わず気圧され、一歩下がる。足を踏み出しかけた彼の体が揺れた。 「ぐああああっ!」 膝をつき、己が体を抱きしめ苦痛の叫びを上げる。 彼は弱点の光の闘気による攻撃以外痛みを感じぬはず。だが炎に焼かれるような苦痛が全身を責め苛んでいく。 その左手に不可思議な紋様が浮かび上がり、光が収まると彼は先ほどよりも怒りを燃え立たせながら立ち上がった。 突然主から引き離され、唇を奪われ、手に妙なものを刻みこまれた。 一連の異常な状況に疑問を抱くより先に罪人を裁こうとする。相手がか弱い少女であろうと容赦するはずもない。 だが、脱力感は残っている。 ふと口元に手を当てると指先に血が付着している。先ほど叫びを噛み殺そうとした際に唇を切ってしまったらしい。 (馬鹿な……封印と秘法が解けている!?) 彼はある秘法をかけられ、いかなる攻撃も受け付けない体だった。さらに、強大な力を主から封じられていたはず。 どうやらこの場に呼び出された際に両方とも解けてしまったらしい。 しかも力は解放されるどころか逆に弱まっているようだ。 少女に罰を下そうと指先を向けたが、鋼鉄の爪は伸びず漆黒の糸も出ない。彼そのものである暗黒闘気の力が使えない。 どの程度かは実際に戦ってみないとわからないが、力の低下は想像以上に深刻なようだ。 怒りが衝撃によって無理矢理冷まされ、ようやく己の置かれた状況に目を向ける気になった。先ほどからずっと主に呼びかけているが返事はない。 つまりここは――主の声が届かぬ、遥か遠い世界。 虚勢を張っているものの怯えを隠せない少女へ、感情を押し殺しながら言葉を吐き出す。 「早く私を戻せ」 「無理よ」 間を置かぬ答えに空気が不穏なものをはらむ。彼の全身から殺気が噴き出した。張りつめた糸を緩めようと教師のコルベールがルイズを庇うように進み出る。 「ミスタ、お怒りももっともですが一度契約した者を送り返すすべはないのです」 「契約だと? ……何を言っている? それにここはどこだ? 地上ではないようだが」 コルベールは青年の威圧感に汗を噴きだしつつ説明した。ここがハルケギニアと呼ばれる世界であること、トリステイン魔法学院であること。使い魔を呼びだす儀式や契約について。 沈黙をどう受け取ったかルイズは控えめに宣言した。 「つまり、わたしがあんたのご主人様ってことよ」 当初の予定ではもっと威厳たっぷりに言い放って従えるつもりだったのだが、そんな態度をとるのは危険な気がした。 彼女の言葉を聞いた瞬間、彼は激高した。 「笑わせるなっ! 小娘風情が主のような顔をするのは……身の程を知らぬにも限度がある!」 小娘呼ばわりされてルイズも負けじと声を張り上げようとしたが、続く言葉に動きを止めた。 「私は……あの御方をお守りせねばならないのに……!」 怒りだけではなく深い悲しみと悔しさ、絶望に染まった声。 ルイズは何も言えなかった。もし自分が突然未知の場所に呼び出され、元の世界の者達と引き離されて二度と会えないと告げられたらどんな気持ちになるだろう。 「我々も帰る方法を探します。ですからしばらくは――」 「ここに滞在するしかない……ということか」 どこまでも虚ろな声が響く。 手がかりになりそうなのはこの魔法学院と呼びだした存在であるルイズのみ。 今の段階では彼らと戦おうとここから出ていこうと戻る方法は見つかりそうにない。それに、秘法が解けている今食事や休息が必要となる。 彼とて血に飢えた殺人鬼や破壊衝動の塊というわけではない。主の敵には容赦しないが理性はあり、ここで暴れるのは損だと囁いている。 「ええ。できれば彼女の力になってほしいのです」 ゼロのルイズと呼ばれている少女の初めての成功だ。誇り高い彼女がどれほど傷つき苦しんでいるか知っているだけに周囲の者と本人に認めさせてやりたかった。 「……私は戦いしか知らぬ」 ルイズは青年の迫力に震えていたが、ぐっと拳を握り締め真剣に考え込んだ。 「平民だったら掃除洗濯その他を任せるところだけど、多分向いてないわよね」 不気味な沈黙とともに頷く。 「ところであんた、何者なの? 貴族? 魔法は使えるの」 「貴族……? 魔法は使えん」 大魔王の分身体を預かっているものの、魔力は最低限しか備わっていない。飛翔呪文や瞬間移動呪文を唱える程度だ。 一応試してみたのだが、何も起こらない。どうやらハルケギニアでは元の世界の魔法は使えないようだ。 答えを聞いてルイズが肩を落とす。“高貴な身分の青年は魔法の天才で召喚した自分も偉くて魔法の才能を持つ”という幻想が打ち砕かれたのだ。 「じゃあ、雑用はしなくていいから戦ってちょうだい。わたしの使い魔として――」 「……ならば証明してみせろ。仕えるに値する主人だとな」 使い魔と言われ誇り高い彼が大人しく従うはずもない。先ほど下した結論はあっさり翻され、理性はすぐ殺意に塗り替えられた。 生徒たちが恐怖に凍りついていく。 うっかり口を滑らせたルイズは慌てて手で口を押さえたが、後の祭りだ。 「私に一撃でも食らわせることができたら、少しは認めてやってもいいが……触れることすらできまい」 虫けらごときには不可能だと表情に書いてある。挑発された悔しさに杖を向けるが、使える魔法などひとつもない。 ゼロのルイズと呼ばれ散々馬鹿にされてきた自分が、これほどの殺気を放つ相手に抵抗して何の意味があるだろう。 今までの蔑視や侮辱の言葉に呪縛され、動けない。焦れば焦るほど“ゼロ”という言葉が脳内を飛び回り、怯えに変わって意識を塗りつぶしていく。 このままでは殺されてしまう――唇をかみ締める彼女の前に立ったのは、クラスメートの一人――ギーシュという名の少年だった。 前ページ次ページゼロの影